- この時期だから聴きたくなる2枚 -


「FLIGHT TO DENMARK」
Duke Jordan Trio

1673nov25-dec2(Steeple Chase)
Duke Jordan.p
Mads Vindeing.b Ed Thigpen.ds


「バラードの夜」
Lena Horne

1976(RVC)
Lena Horne.vo
Phil Woods.as ...etc

 いよいよ寒くなってきて本格的な冬に突入。起きたら外は一面真っ白の雪景色になってました、という朝もこれからは多いんじゃないでしょうか。といっても私の住んでる弘前は北国。冬になったら雪が降るというのは当たり前のことで、寝ても起きても雪景色の日々が続きます。それでも近年暖冬傾向にあり、除雪も行き届いてきたので春まで地面が見えないという小さい頃の環境とはだいぶ違ってきました。昔は雪が積もると道は狭まり、車一台通るのがやっと。さらに道の両脇に山となった雪の上に小道が出来て道路を見下ろしながら、上ったり降りたり繰り返しながらて歩いたもんです。子供だったから楽しかったけど、年寄りは相当大変だったんじゃないかと思いますね。除雪もしっかりしてなかったから、つもり積もった雪はいつのまにか家の玄関の高さを超えて、道に出るのに登りの階段が必要になることもありました。まさに雪に埋まったかまくら状態。そんなこともあったんだなと、いまさらながら思い出してます。
 なんか思い出話で終わりそうですが、ここでやっとこのアルバムが出てきます。まずはジャケット。なんでこんな写真にしたんでしょ? ジョーダンさん、寒そうです。ほんとに冗談にもならないような...
冬の公園は確かにこんな感じです。一面真っ白。澄んだ空気と静寂のモノトーンの世界です。雪を踏むサックとした音と自分の息づかい。ちいさく吐いた息が蒸気となって消えてゆく。それだけが生命の感覚を感じさせてくれるような時間です。
 ジョーダンのピアノトリオがそんな世界を静かに描いていきます。ブラシでシンバルを叩く音も、雪がしんしんと降る様子を思い起こさせて、北国育ちの人には愛する一枚になるの
は間違いないでしょうね。

 もう一枚はヴォーカルである。美しい脚線美を惜しげもなく披露しているジャケットはリナ・ホーンのアルバム「バラードの夜」。もちろん本人も大変美しい人で映画にも出演している女優さんでもある。艶のある歌声と情感に溢れた語り口は、聴く人を引きつける魅力充分だ。それもそのはず、彼女はコットン・クラブのコーラスを始め、名立たる多くのスウィング・バンドと共演しブロードウェイにも出演、さらにはラスベガスのショービジネス界でも大活躍したエンターティナーなのである。そんな彼女が雪の降る静かな夜に、そっと語りかけてくれるように歌ってくれるアルバムがこれ。
  選曲も「Someone to Watch Over Me」「My Funny Valentine」「Someday My Prince Will Come」「My Ship」といった至極の名曲ばかり。ロバート・ファーノン・オーケストラをバックにアルトサックスのフィル・ウッズがフューチャーされ、これでもかと美しいフレーズで迫ってくる。
 お酒を片手に暖かなお部屋で彼女と一緒に聴き入ったら、まさにとろけそうな時間を過ごせそうである。が
私はこのアルバムを一人で聴いていた。男一人で聴くアルバムじゃないよ。さみしー!
 しかし考えてみれば、なんでこのアルバム買ったんだろうかな? 当時そんなにジャズヴォーカル聴いてたわけじゃないし、どちらかといえばコルトレーンだドルフィーだミンガスだと硬派なジャズに傾向している時期だったようにも思うんだけど。でもそんな時だったから、こんな心休まるアルバムが私のもとにふっと現れたんじゃないかとも思うけど...