-ビル・エバンスのライブ・アルバム2枚-

Bill Evans
At The Montreux Jazz Festival

Verve/june.15,1968
Bill Evans.p Eddie Gomez.b
Jack DeJohnette.ds

Bill Evans
Live In Tokyo

CBSソニー/jan.20,1973
Bill Evans.p Eddie Gomez.b
Marty Morell.ds

 私が高校時代に愛聴したアルバムの一枚がこの「モントルー・ジャズフェスティバルのビル・エバンス」です。ジャズ聴き始めの高校生の頃、毎日のようにジャズ喫茶に通ってはいろんなアルバムを聴いていましたがとりわけピアノトリオが気に入りまして、バド・パウエルやチック・コリア、そしてエバンスを好んでいました。
 一枚、また一枚と次々とかかるジャズのレコードを聴いてはジャケットを手に取って眺めて、欲しいな〜とヨダレを流しつつ、聴いたことのないレコードは全部聴いてやろうと何時間も珈琲一杯でねばっていたのを思い出します。いま自分が店主になってみると、嬉しいながらも大変迷惑な客でしたね!
そんな中よく聴いたエバンスの一枚と言われると浮かぶのが「お城のエバンス」として有名なこのアルバムです。始めにメンバー紹介がありますが、そのフランス語のアナウンスを今でも言えるほどですからね。
エバンスのアルバムで最初に買ったのもこのレコードだと思います。スイスのレマン湖の畔に立つシオン城の美しいジャケットは一度見たら忘れられません。また録音も素晴らしく、35年も前の演奏とはとても思えませんね。ドラムスにデジョネットが参加していているのも異色。エバンスの美しくも繊細な感性とぶつかり合ってスリリングでダイナミックな展開が繰り広げられていきます。一曲目の「One for Helen」なんかは何度聴いてもドキドキしてしまいます。エバンスのピアノソロ「I Love Your Porgy」の美しい演奏も印象的です。
 1973年1月、ビル・エバンスが初来日して東京郵便貯金ホールで行ったライブです。
多くのジャズファンが待ちに待ったエバンスの音を一音も聴き逃すまいと静まりかえった会場に、トリオのインタープレイが繰り広げられる様子が伝わってきて、まるで自分もその場にいるような錯覚で聴いてしまいます。一曲終わるたびに大きくわき上がる拍手も、そんな臨場感を感じさせてくれます。
 メンバーはゴメスにマーティ・モレルと当時の固定メンバーで意気もぴったり。エバンスとゴメスのインタープレイをモレルがうまくサポートするという展開で演奏が進んでいきます。
 その後78年にツアーで秋田に来まして、その時は私も喜び勇んで聴きに行きました。メンバーはベースがマーク・ジョンソン、ドラムスがフィーリージョー・ジョーンズというトリオです。初めてエバンスに会える、生で音が聴けるという期待もありましたが、ドラムでフィーリーが同行しているというのも楽しみでした。公演が始まる前にトイレに行くとなんと、鏡の前でフィーリーが髪を整えているじゃありませんか!
トイレでフィーリーと二人っきりになった私は、おしっこするのも忘れて握手とサインをお願いしたのを覚えています。その時サインしてもらおうと持っていった一枚のアルバムがこの「IN TOKYO」でした。もちろんコンサートも最高。演奏後はエバンスにもサインをもらいマーク・ジョンソンとも笑顔でご挨拶しました。でもそれがエバンス最後の来日になるとは思いもしませんでした。
そんな想い出とも重なってしまう「Bill Evans Live in Tokyo」です。